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 書籍紹介
■『スコットランド 歴史を歩く』■
   /高橋哲雄 (2004年 岩波新書)


◆カバーコピー

「氏族の誇りを示すタータン柄のキルト、民族の英雄叙事詩「オシアン」など
古代に遡る「伝統」とされていたものの思いがけない起源。それは英・仏という大国の間に挟まれ、
内部には分裂を抱えたこの小国の複雑な軌跡と深くかかわりを持っていた。
聖堂や古城,渓谷などをめぐる旅から浮かび上がる、スコットランド〈国民再生〉の歴史。 」


◆著者について

「1931年神戸市に生まれる。1954年京都大学経済学部卒業。専攻−イギリス近代史。
現在−甲南大学・大阪商業大学名誉教授。著書−『イギリス鉄鋼独占の研究』(ミネルヴァ書房)、
『二つの大聖堂のある町』(筑摩書房)、『ミステリーの社会学』(中公新書)、
『アイルランド歴史紀行』(筑摩書房)、『イギリス歴史の旅』(朝日選書)ほか。」


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◆日本にとってのイギリス、それは「スコットランド」だった

「明治初年の「殖産興業」の助っ人軍団である「お傭い外国人」の主力を占める技術者たちの
重要な部分はスコットランド人だった。R・Hブラントンは日本の「灯台の父」と呼ばれ、
ヘンリ・ダイアは工学教育の拠点 工部大学校をつくった。
その後もグラスゴウは日本の造船技術者の最大の留学先になる。
日本語での受験さえ認められ、留学中の夏目漱石が出題を委嘱された。
ジャーディン・マセソン商会や、長崎にいまも邸の残る
トマス・グラバーのような政商の活動も幕末以来目立った。

他方、サミュエル・スマイルズの翻訳『西国立志編』(明治四年)が広く読まれて、
その自助の精神で貧しく野心的な青年を力づけ、アダム・スミス『国富論』も
早くに紹介された(明治三年部分抄訳、明治一五〜二十一年全訳)。
『西国立志編』は明治天皇も手にしたという。若い天皇はどんな面持ちで
「天はみずから助くる者を助く」の件りを読んだことであろうか。

つづいて明治十年代にはウォルター・スコットの歴史小説や物語詩の紹介や翻訳によって、
さらに明治二十年代には新渡戸稲造、内村鑑三らをつうじてカーライルへの関心が高まり、
若い明治人の心性に理想主義やロマンティックなナショナリズムの炎を吹き込む。
「蛍の光」や「故郷の空」、「才女(アニー・ローリー)」といったスコットランド民謡も
小学唱歌として広く愛唱された。スコットランドは日本の近代化のあけぼのにさいして、
逸することのできない<出会い>のあった国の一つである。

この間早くに岩倉使節団の訪問(明治五年)があり、商工業や公共施設の視察だけでなく
「(ヨーロッパの)山水ノ勝ニ名アル地三アリ、一ニ瑞士(スイス)、二ニ以太利(イタリー)、
三ニ蘇格蘭(スコットランド)ナリ」として、ハイランド(高地地方)周遊に日を割いたりもしている。
夏目漱石が二年間の「人生で最悪」のロンドン留学の最後にハイランドの谷間の村
ピトロホリに癒しの旅を試みたことを付け加えてもよいだろうか。
日本人が「英国」との触れあいと考えていたものの相当な部分が
実はスコットランドのそれであったのだ。」(p7-p8)



「英国」といえば、英語で「イングランド」ですよね。

だから私は、イギリスといえば、イングランドを指すものだと思ってましたが、違うんですね。
私たち日本人のイメージの中にあるイギリス、それは、「スコットランド」にあったのです!

日本は工業立国として、発展を遂げてきたわけですが、そのルーツをさかのぼってみると、
「スコットランド」にあったんですね。知りませんでした…。
(学生時代、歴史の時間は寝てました(^_^;))


(ところで、学校でよく歌った「蛍の光」がスコットランド民謡だって、みなさん知ってました?)


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◆日本人の「倹約の精神」のルーツも「スコットランド」にある

以前『なぜ人はショッピングモールが大好きなのか』を題材に、
日本の消費者と米国の消費者とのショッピング行動の違いについて触れましたが、
その理由を私なりに考えてみたのですが、その最大の理由は「倹約の精神」、
つまり、「堅実な金銭感覚」にあるのではないと思うのです


このことは「家計貯蓄率」を見てみるとわかります。

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※家計貯蓄率の国際比較(2001年)

アメリカ − 2.3%
イギリス − 5.5%
日本   − 6.9%
ドイツ  −10.1%
フランス −11.5%

⇒ http://www.saveinfo.or.jp/kinyu/stat/data2003/data2003-021.pdf
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米国の家計貯蓄率は、他の国に比べてずいぶんと低いですよね。
この家計貯蓄率を見る限り、日本の消費者の方が堅実な感じがします。

以前、『清貧の思想』という本がベストセラーになったことがありますが、
おそらく、この考え方、米国では受け入れられないでしょう。

この「倹約の精神」のルーツも、もしかすると、「スコットランド」にあるのかも知れないのです。


「スコットランド人のエートスを構成する堅実な金銭感覚の側面については
数えきれないほどの逸話がある。「しまりや」というのが、スコットランド人への
よく知られたレッテルの一つであり、たとえば倹約にかけてはどの国民にも
ひけをとらぬはずのドイツ人が「スコッチ値」(Schottenpreis)とか
「スコッチ・ユーモア」(Schotten-witz)といった表現を日常的に使う。
前者は「超安値」とか「バーゲン価格」の意味であり、後者はスコットランド人の
ケチくささをからかうジョークのことである。

しかし、このジョーク、スコットランド人自身が好んで創作し、広めた疑いがある。
アメリカの歴史家ウォレス・ノーテスクインによれば、これらのケチンボ噺は
主に十九世紀のロンドンのクラブで、急速に経済力をつけてきたスコットランド人の
「ニュー・リッチ」ぶりを揶揄する逸話として生まれた。
始まりはそうでも、やがてスコットランド人はみずからを「しまりや」と呼ばれることを
誇りとし、楽しみにさえして、自分の「スコットランド人らしさ」を証明するために、
しなくてもいい節約をしてみせたりするようになったという。」(p198-p199)


日本の女性はとても堅実です。

派手なようにみえても「しまりや」さんが実は多いですよね。
(家計を預かる主婦になったら特にネ(^o^))

「節約」と聞くと、思わず反応してしまう人は多いんじゃないでしょうか?
堅実さにかけては、スコットランド人にひけをとらないような気がします。

だから、「日本の消費者に受け入れられたら、どこの国でも売れる。」
なんてことが、よくいわれたりしますよね。

この感性って、ひょっとして、スコットランド人にルーツがあるのでは?

明治時代にスコットランドから学んだものの中には、この「倹約の精神」もあったのかも知れません。

そして、それは、いまも脈々と私たちのアイデンティティの中に受け継がれている。

この本を読んで、そんな風に思いました。

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この本には、イギリス中をくまなく旅した著者ならでは、「へぇ〜」とうならせる内容で溢れています。

(とくに3ページの「標識」のお話、「74へぇー」は確実です(^O^))

海外旅行通にいわせると、観光ガイドを100冊読むより、その国の歴史の本を1冊読む方が、
100倍楽しめるそうです。


ですから、「英国」に旅行したいと思っておられる方にもオススメの一冊です。


○この本の詳細についてはコチラ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/400430895X/



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